<提言>

 

人口爆発と未来社会への課題と展望

 

― 地球規模の人口爆発に対する日本の立ち位置と対応戦略 ―

 

はじめに

 

戦後75年で世界人口は約4倍に増加し、80億人を突破した。

この急激な増加は、環境破壊、資源枯渇、経済格差、移民問題を深刻化させ、各地で紛争や水・食糧不足を引き起こしている。

この混乱の根底にあるのは「人口爆発」という単純に見える現象が、実は問題を引き起こす原動力となっているのではないだろうか?

人口動態の変化がもたらす地政学的リスクは核戦争の虞までも強まっており、そのような環境下で、日本が直面する課題と必要な改革を考察する。

 

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地政学的構造変化と人口爆発

 

人口爆発は各国の国力バランスを変え、中国を含む東アジア、さらにグローバルサウスの発言力拡大は、西欧型の民主主義・資本主義の影響力を相対的に低下させ、数世紀にわたって続いた西欧中心体制を揺るがしている。

それに伴って専制主義や独裁国家が勢力を強め、更に過去の西欧諸国による植民地政策の負の遺産(ポストコロニアリズム)が現代の紛争構造に影を落とし世界はまさにパンドラの箱を開けたかのような混沌を呈している。

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複合リスクと人類の危機

 

軍事的リスクに加え、気候変動、AI、感染症、といった非伝統的リスクが複合化している。

自然災害の激甚化やAIによる社会構造の変容は「人新世」とも評され、国家レベルでの連携と迅速な対応を迫る。

さらに、米国や西欧諸国では移民問題を契機とした国内の政治的分断が深刻化し、国際秩序の不安定化を助長している。

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人口動態の将来と希望

 

国連は統計学的な予測として今世紀末に世界人口が100億人でピークアウトを迎えるとしている。

すなわち先進国を中心に一転して人口減少が進行し、中国や韓国でも著しい減少傾向が見られるようになってきている。

この「反動としての減少」は自然界の動的均衡現象に似ており自然の摂理とみられ,人口の安定化は一見すると朗報だが、地政学的には各国のパワーバランスなどの劇的な変化が中長期的に継続する訳で、今後を乗り切るには気候、資源、経済、政治の各分野で持続可能な対応が不可欠であろう。

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自然の摂理と人口動態

 

そもそも我々が存する宇宙を構成する最小単位である量子は、常に運動とエネルギーの交換を繰り返し、物質はこのミクロの動きによって絶え間なく生成・消滅を繰り返す。

人体も星や岩石と同様に量子のゆらぎともつれと重ね合わせの動的変化の自然の摂理の中にある。

 

その量子の変化がマクロたる物質に集積されると、“生壮老死”のサイクルとして顕在化する。

銀河や恒星は誕生(生)、活性期(壮)、収縮(老)、そして崩壊(死)を経る。

この不可逆な流れと世代特性は無機物から有機物、生物に至るまで一貫しており、逆戻りのない進行が自然界の揺るぎない法則とみられる

 

その中で生物は自己複製機能を通じて個体数を増やし、突然変異という偶然の要素を取り込む。

約5億4千万年前のカンブリア爆発では多様な生命が一斉に出現し、その後の環境変動に適応できた種のみが生き残った。

この作用こそ変化しながら最適状況に向かう「動的均衡」であり、環境収容力を超えると淘汰が起き、適応度の高い個体群が新たな均衡点を築く。個別の種でも大量発生と自律的減少、捕食動物と被捕食動物のバランスなども同様の現象といえる。

 

人間社会の人口増減も、「動的均衡論」に基づく生物集団の典型的な自己調整機能に則っている。

急激な増加(オーバーシュート)は資源枯渇や環境破壊を招き、水不足や疫病、紛争などのネガティブフィードバックが働いて個体数を減少方向へシフトさせる。

人知による一時的な抑制には限界があり、最終的には自然の法則が均衡を回復しようと作用する流れの中にある。

 

これらの摂理は、方丈記の「行く川に流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」平家物語の「諸行無常」など我々日本人としては得心しているところでもある。

 

従って、人知での自然制御は不可能だが、一連の流れ(フィードバックループ)を理解し“適応”することで一定レベルの対応が可能となる。

再生可能エネルギー、持続型農業、資源連動型の都市計画などは、自然の自己調整を阻害せずに社会安定を図る手段といえる。

人類は自然の摂理と調和し、人類滅亡の危機を乗り越え、動的均衡の中で共生の道を模索すべきである。

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日本の構造的課題

 

日本は世界に先駆けて長寿・高齢化と少子・人口減少が進行し、「失われた30年」として世界でのGDPシェアを14%から4%へと大幅に低下させた。

過去の人口ボーナス即ち拡大期に構築された社会システムが人口オーナス(負荷)期に入って機能不全を起こしており破壊と創造により環境変化に適応した新システムを今後30年程度を目途に構築しなければならない。

人口オーナスとは単に人口が減ることではなく人口ボーナス期の経済成長の仕組みを変えたくないという思考を維持したまま人口減に入ることで社会コストが倍加することにある。

新しいシステムを構築していくに際しては、西欧型の民主主義の限界を認識したうえで日本の宗教的多層文化を基盤にした寛容性のある未来構想を国民全体で共有していくことが求められる。

 

主な課題

 

少子化

人類の動的均衡作用の中で現行施策での出生率回復には限界があり30年後の人口総数は近時の出生数から見ても6000~8000万人程度とみられる。そこで各世代層の役割を見直し、将来の人口減少を前提としたバックキャスト的な政策が必要となる。

 

 

定年延長

「失われた30年」の根本原因は「壮」世代のエネルギー活用不足であり、就職氷河期世代はその典型である。

当時の在籍従業員の雇用優先が現在に至って組織内高齢化を促進し50歳以上の「老」が社会の中心にある。

現在検討されている、定年を70歳まで延ばすと若壮年層の活躍機会が更に減少し、シルバー民主主義化を加速する恐れがある。

一方でエッセンシャルサービス分野では労働力不足から75歳程度までの就労が拡がっている。

世代間の役割見直しと創発により新しい世代共生を進めなければならない。

 

 

長寿社会の幸福

人生100年時代を迎え、望ましい長寿とは何かを再考すべきではないか。

人間にとっての長寿は人生の質であり”人生100年時代”などの用語も見直し、延命治療・安楽死の法制化など倫理的議論も必要である。

動的均衡論で見れば長寿こそ現役世代の負荷を増し少子化へ導く誘因ともいえる。

 

地方創生

産業構造のソフト化や若者の価値観から見て自然の摂理に逆行する地方創生政策より先に、若壮年層の期待する職業機会、多様な文化、匿名性などが満たされているために転入が続く大都市の住環境改善を図ることを優先し、結婚、出産を促すべきではないか。

地方の限界地域の発生も動的均衡の流れとして容認する視点が必要。

 

移民

地球上の地政学的大変革の中で日本だけが世界的な移民増加を避けることはできない。

それに対応して国籍制度や選挙権、税制の見直しで国際社会で日本の責務としての適正規模の移民の受け入れと同時に他民族との共生での社会不安を最小化すべきである。ただし日本文化の適正規模は一万年の日本列島への人々の流入と異民族の共生の歴史から見て比較的低い水準とみられる。

 

G7・日米同盟

西欧各国のキリスト教的文化普遍主義(グローバル化)の限界と世界それぞれの文化相対主義の広がりに対応して明治以来の脱亜入欧政策を見直し、アジア地域の一員としてグローバルな自立的外交・安全保障戦略を再検討する必要がある。

更に一歩進めて、日本人の一人一人に在る文化多層性(神道・アニミズム、仏教・儒教、近代文化)による寛容性を生かし唯一の被爆国として核戦争による人類自滅を回避に貢献すべきであろう。

 

 

世代間共生の提案:「生壮熟老死」モデル

 

明治維新及び世界大戦後には社会システムの激変とそれに伴う世代交代があった。

現行の人口ピラミッドのゆがみは健康医療による長寿化であり反動としての少子化のため世代交代については全く逆行の状況にある。

そこで自然の摂理の「生壮老死」のサイクルを大前提に「生壮熟老死」へ細分化し、各世代の創発的共生を図る。

具体的には「老」世代を細分化し前半を「熟」後半を「老(後期高齢者)」とし人口減少の中で国力の低下を防ぐべく「壮と熟」の世代間協働を確立する。

 

若年層・壮年層(25~55歳): 宇宙不変の真理たる世代特性としての壮世代の高いエネルギーと適応力による価値創造を中核的役割として位置づけ持続的成長を担う

熟年層(55~75歳程度):受容力と保守化する性向を生かし人手不足が深刻なエッセンシャルサービス分野で社会インフラを支える。

老年層(75歳以上、後期高齢者): 感謝と謙虚さをもって自助と他世代から支援を受ける。

 

必要とされる5つの改革の枠組みは以下の通り。

 

社会制度改革

社会全体では健康年齢の75歳程度に定年を延長することで労働力確保と年金問題への対応とする。

併せて55歳以降の熟年世代を対象にリスキル訓練と適材配置を進める公共セーフティーネットを整備し、著しい人手不足が見込まれるエッセンシャル産業へのシフトを促す。

現在の企業・官公庁などの組織で適材適所主義の徹底で上級管理職の中心世代を先進国並みの45歳から55歳程度に戻す。

これにより、壮世代の活力と適応力を社会の主軸と位置付けることができる。

 

熟世代の受容力と伝承力で社会基盤を支える。  

 

実質的に個々人にとっては人生二毛作の選択肢として、55才で一回目、75才で二回目の定年で「熟老世代」の協働を図ることで長寿化社会に適応していくことになる。

社会システム改革としては、広く、企業、公共団体、その他組織にて、これまでの定期採用、正規非正規雇用、年功賃金、企業内組合などを見直し、雇用の流動化などを進める。

        

 

             

経済改革

上記社会制度改革に対応し、従来の企業等に課していた雇用義務を見直し、一定以下の業績水準(赤字など)の企業・事業を市場退出させる。

当該従業員について上記公共セーフティーネットで受け、リスキリングを支援し成長産業へシフトさせることで産業構造改革を果たす。。

時代変化に適応しない過去の成功体験による経営を断ち切るためにガバナンス改革による経営層の選定及び若返りを進める。

人口減に対応して経済安保以外の事業について国内生産(有形資産ハード)の復活を図るのではなく国内開発工場(マザー工場)程度にとどめ、人口増加が続く海外投資立国政策を引き続き強化するものとし、そのための無形資産たる人的・知的資本(ソフト)の育成を図る。

 

都市政策の刷新

大都市と地方の役割の見直しと創発的連携。

現行の地方創生策を見直し今後の主軸となるIT・知識集約型産業を支える都市インフラ整備を優先させる。

若壮年層は、就業機会の多さ、多様な人々との出会い、新しい文化、匿名社会の自由さなど自らの幸福を目指して都市に流入する。

自然の流れであるが、現状の都市過密化は地価、スペースなどで流入する若壮年層の結婚、出産を阻害する。

そこで、三大都市では市街化地域農地の宅地化及びゼロメートル地帯の計画的高層化で通勤圏居住スペースを倍増させる。

これをスムーズに進めるためには道州制の導入が望ましく、中心部、周辺通勤圏、農地の再編の計画的実施が期待できる。

道州制となる6大都市では中心都市と分散農地の再整備でゼロメートル地帯及び山間部危険地域の解消を進めることで大地震、巨大風水害などへの対策も可能となる。

用途地域を「都市化地域」「維持地域」と設定し「消滅地域」は動的均衡として30年程度で是認しつつ住民の福祉を確保する。

農業の大規模化・デジタル化で生産性向上を図り持続可能性を高め、人口増を織り込まない。

都市部での人口増加と地方部での食糧安保の確立で新しい都市と地方の役割分担、共生が実現できる。

 

教育改革

国民性に応じた多様なウェルビーイングモデルで変化適応型の人材を育て、対話力・創造力・問題解決力を育成する。

これまでの悪平等教育を排除し柔軟な仕組みとし分野ごとに適正人材の発見、育成の仕組みを構築する。

現代の若者に見られる社会課題解決への参加意欲を促進させる。

明治維新時の過剰な西欧文化への反発による軍国全体主義及び戦後の自虐的西欧文化の受容を見直し、一万年以上にわたる縄文精神を基礎に、弥生、仏教、儒教、そして近代の民主主義を重ねた平和主義、寛容な精神を再発見し、自律した日本文化を自覚する教育を進める。

 

政治改革

常なる社会の変化への適応を担保すべく完全人口比例選挙制へ移行し、世代・地域間の不均衡を是正。

自然の摂理に反する社会の固定化につながる世襲排除と多様な候補参入で 政治の活性化を図る。

富裕高齢者の資産を年金原資化し(熟老共生)若壮年層の負担を軽減する新しい社会保障制度の構築。

国際的責務としての日本人の寛容性による世界の分断を防ぐための活動を進め、核戦争の虞が高まることに対して、これまで以上に被ばく国として一貫して核廃絶運動の先頭に立ち、人類核戦争自滅を回避すべく日本固有の個々人に根差す文化を生かし国際貢献を果たす。

即ち欧米型の普遍主義の限界を認識し、文化相対主義の中で人類の動的均衡に適応していく。

 

おわりに

 

人口爆発とその後の減少を自然の摂理として受け止め、人間社会の動的均衡の流れの中でこれまでの社会システムを見直し、人口動態の変化に適応する国民性に添った人間観に基づく新しい社会システムを創造することが、少なくとも今後30年程度の中長期にわたる日本にとっての指針となる。

そのために各種政策や公共制度において文化的適合性を検証する標準(メルクマール)を導入する。

GDP等の経済指標に加えて社会の変化を指し示す指標を設定し、寛容性のある日本人として国民全体で社会システムの変化プロセスを共有する。

世代間の役割を見直し創発的共生を通じて「賢く縮み快適な未来社会」を築いていきたい。

そのことを通じて日本のロールモデルの枠組みを世界各国の文化にあわせて拡げ、平和で快適な未来社会の実現に貢献する。

 

                                                       以上