<仮説>

 

<令和日本列島改造論>

 

半世紀以上前の田中角栄元首相の日本列島改造論、功罪はあったが、まさに時代を象徴する施策であった。

戦後のベビーブームなどの人口増に伴って奇跡の経済成長を遂げ日本全国の地方を都市化するという人口ボーナス期にこそ求められる政策であったのであろう。

新幹線網が整備され日本中が沸き立ち土地価格が暴騰し、究極的には日本全土の土地代でアメリカ全土が買えるという話にもなり、誰もが半信半疑ながらうまい話に乗っていたわけである。

ところがである。

0年経って、人口は2011年ピークを打ち減少が始まった。

実質的には労働人口は20年以上前から減少に転じていたが、高齢者の長寿化があり見かけ上の減少は遅れて現れていた。

いずれにしても人口推計では50年後には全人口が8000万人を切るとの試算もあり、しかも毎年予測値を下回る推移が続いており、時期が早まる可能性が高い。

長寿化による高齢者の増加と反動としての少子化、これが現代の人口オーナス(負荷)である。

 

そういう状況の中での現行の地方創生策がある。

地方の人口減少と高齢化、東京圏への一極集中、地域経済やコミュニテイの持続可能性の危惧などへの問題解決策である。

豊かな地方文化を守って日本全体を復興させるにはどうしたらいいか。

 

2014年に政府で作られた地方創生策は以下の通り。

1 安心、安全な地域つくり

2 新たな産業、雇用の創出

3 少子高齢化、人口減少の歯止め

4 文化、芸術、スポーツを通じた魅力発信

5 地域間、官民連携体制の強化

基本的に50年前と同じく地方を強化していこうという事である。

 

2014年から10年余の現状は以下の通り。

1 地方の人口減少は想定以上、東京圏への転出超過

2 少子高齢化の加速

3 魅力的雇用の不足で若者の都市部流出継続

4 中央政府主導と地域住民の無関心

結果として、ほとんど効果を上げていないどころか年々悪化の状況にある。

 

理由は簡単、人口減少に歯止めをかけるために地方対策を考えているからである。

現在の人口減少は過去の人口急増の自律的反動であり全国規模で見て共通の現象であり動的均衡という自然の摂理とも言えよう。

現在の人口減少を明治維新、戦後と並ぶ民族の時代を画する事象と捉え全国民で正面から捉えるべきである。

其のうえで国民の幸福を実現するために国土計画がどうあったら良いのかという視点に立つことである。

世界的に見ても先進国ばかりか韓国、中国も日本を上回るピッチで少子化が進んでいる。

昨年の日本の出生者は70万人を割っており、30年後で8000万人を割る可能性さえ予想される中での事ことである。

 

 

それにも関わらず地方創生が提言されるのは、現在の出生率で地方の一部で首都圏より上回っている県が見られるからとのことである。

何故首都圏の出生率が低いか。地方からの若者、特に女性の流入が多いからで分母の増加に分子が追い付いてないのである。

 

それでは、何故若者の流入が多いのか。

当然のことではあるが、彼らが、まずは自分自身の幸福を追求しているからである。

都市部に於ける就職機会の多さ、多様な人々との出会い、サブカルチャーなど新しい文化との出会い、匿名社会の自由さなど、若者が求める幸福の要素は多く更に社会インフラも充実している。

 

他方、地方はこれらの特徴と全く逆の状況にある。

就職機会も少なく、高齢者も多く同調圧力ゆえの不自由さ、ハコモノなど重視で保守的であり、其のうえ社会インフラも年々欠如している。

 

一方で都市部集中には問題点も大きく、都市部の過密はひどく更に地価の高騰も激しく、子供を産み育てる環境としては劣悪なものがある。

従って流入人口は多いが出産という分子を増加させる生活環境にない状況にある。

そうなると都市部の若者はまずは自分の幸福を優先し、結婚、出産をあきらめているというのが実情であろう。

他方、地方では広い居住と緑豊かな環境であり、それに満足する若者も長男を中心に一定割合で存在している。

然しながら、長女、次男、二女は居所もなく都会志向となる。

従って長男の結婚相手はいないわけである。

 

結果として将来を担う若者の選択として自分の幸福追求として都市部が選ばれているわけである。

日本の産業構造のソフト化の進展の中では産業構造的にも都市型となっていくため就職機会も都市に偏することは避けられない。

 

若者の考えを尊重すれば、幸福実現のための都会志向を肯定し、其のうえで都会の住環境の改善を実現し結婚、出生の増加を目指すのが現実的ではないか。

 

それでは都市部の過密対策とは何か。

東京、名古屋、大阪の3大都市での都市部農地の住居地域への転用と中心部のゼロメートル地帯の一戸建て住居の高層化とである。

通勤圏内の農地は多く、大半が都市型農業用地となっているが、これらを計画的に居住用に転用し、物流網が改善した地方へ都市型農業の生産を移転することである。

一方中心部の一戸建てについてはゼロメートル地帯を中心に高層化を進めることで住居対策と大地震及び風水害対策を兼ねることができよう。

居住スペース候補地域の拡大により3大都市部での居住スペースを大幅に増加させることが可能となる。

 

いずれにしても公共政策として、土地所有など私権の制約が発生するが、人口減少、国家滅亡の可能性の中では憲法での公共の福祉条項が該当するのではないか。社会での議論を進め国民共通の認識を醸成することが求められる。

該当地区の居住者の選挙など賛同が必要となるが、これも住居受益者の方が圧倒的に多数とみられ土地所有者は適切な補償で売却していくこととなる。

土地は私有物であっても独立して存在できるわけではなく、近隣との調和の中で活用されるものであり公共性の高い資産である。

実施機関はUR都市機構などが主体となり、長期間にわたって土地の収用から住宅建設までを推進していくこととなる。

 

都市部の改革と同期化して地方の市町村再編により限界地域を中心に分散している市街区域を廃し農地を大幅に増強し食料安全保障面での農業強化を図る。この強化は持続可能性の点で国際競争力構築も鑑みれば人口増に期待することなく大規模化、デジタル化、企業化で対応すべきであろう。

 

即ち、現行の地方創生論を根本的に改訂し、自然の摂理としての動的均衡による人口減を大前提とし更に産業のソフト化の流れの中で、集中する地方都市部の快適化とそれを支える地方地域の農地、緑地という組み合わせに立つべきである。

30年後8000万人を切る可能性のある状況で現在のように各地に分散した居住、産業立地では安心、安全のインフラを提供し続けることは難しいという事である。

 

70年前の高度成長期の日本列島改造論では人々の自由志向の赴くままに誘導していけばよかったが、現況は全く逆であり、人々の既得権の維持、現状生活環境の継続という思考を制限することになる。

民主主義と私有権を含む資本主義の成熟度が試される。

憲法にいうところの第22条、公共の福祉が優先するという事は人口減少の社会で何かという事が問われることである。

これが今回の列島改造での共通認識、「賢く縮む」、「世代間の共生」、「地域間の共生」、「自由と義務」ということである。

 

これらの意識改革こそ日本全国の人々が共有しなければならない。

今起きている急激な少子による人口減少は、かっての明治維新及び戦後と同じかそれ以上の社会変化であるという事を国民が認識することである。

 

東日本大地震、能登半島地震などの復興策について、大半の地域で新規対策を止め、せいぜい30年間最小のインフラ維持に努める、北陸新幹線の延伸の中止などもある。これらの地域の人口は間違いなく減少し改修しても利用する人たちは存在しなくなるわけである。

そうであるならば限界地域の人々について都市部への移転を促進し、現状居住を継続希望する人たちへは、これまでの社会インフラの維持は困難であることを理解してもらう事であろう。

仮に公費が支出されたとしても、そのインフラで働く若者はごく少数になってしまうことは予断を待たない。

一方で首都圏の埼玉県三郷の下水道インフラ破壊対策がある。同様な状況は日本全国にあるとのことで全地域での対策を進めなければならないわけであるが、上記事由から都市化対象地域の見極めが必要となる。

 

令和日本列島改造には、もう一つ目的がある。

地球温暖化による自然災害の激甚化と将来の巨大地震対策である。

これも被害を最小限にするためには災害危険地域の解消と安全地域への移転がある。

上述の通り大都市でのゼロメートル地域の解消のための高層化及び地方都市周辺部の危険地域の見直しである。

これらも本計画の中で時間をかけ徐々に30年で解決させていく。

 

他方東京一極集中は国全体の安全保障面で大きな問題であろう。明治維新、黒船来航で社会が変わり都道府県制となったが、同様のインパクトで今回の列島改造を考える必要がある。

そこで、かって議論された道州制がある。

都市集中は避けられないが、一極集中を避けるために、安全保障上、東京と大阪を正副首都と位置付け補完性を持たせ、残る4地域で中心大都市を軸に地域内の中小都市及び地域の再編を進める。

 

再編とは地方の主要都市以外の限界都市及び災害危険地域については、食糧安保の観点から大規模農地へと転換し大都市を支えていく。

その際、国際基準並みに生産性を上げることで経済的な持続性が担保できるわけで、人口の増加は期待せず、織り込みも必要ない。

 

以下に整理する。

 

1. 社会構造の限界と転換の必要性

 

日本は急速な少子高齢化と人口減少に直面し、従来の「若者が高齢者を支える」世代間構造は維持困難となっている。

これはもはや一地域や一世代の課題ではなく、国家的な存立基盤を揺るがす大問題である。

加えて、都市と地方の格差、社会制度の硬直化が深刻化しており、単線的な制度改革では対応しきれない。

したがって、国土再編と大災害対策のために国民的合意のもとで土地の私有権の一部制限や国土法改正を含むトップダウンの制度改革を断行し、その制度的枠組みを基盤として、個人や集団の自発的な相互作用から新しい秩序を生み出す「創発現象」(ボトムアップ)を促すことが不可欠である。

制度としての上からの設計に依存するのではなく、トップダウンの改革を触媒としつつ、現場からの多層的な関係性の再構築が求められている。

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2. 創発的アプローチの意義と世代間共生

 

創発とは、個々の行動が重なり合い、上位の秩序を形成する現象であり、社会政策に応用することで複雑な課題に柔軟に対応できる。

特に世代間交流を創発的に設計すれば、高齢者の経験と若者の革新性が補完し合い、新しい社会モデルが形成される。

高齢者は地域や職場で知識・経験を共有し、若者はデジタルや国際感覚を提供する。

企業では硬直的な後継指名を避け、柔軟な世代交代を促進する。

社会保障はライフステージに応じた相互扶助モデルへと転換する。

こうした取り組みは、トップダウンの制度改革によって基盤が整えられることと、世代間断絶を超えた共生の秩序が創発的に生まれる。

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3. 大都市と地方の再構築:現実的な循環モデルへ

 

若者の大都市志向は依然として強く、地方の人口流出は止まらない。

従来の「地方創生」だけでは限界があり、上述の通り、都市の住環境や働き方を改善し、子育てとキャリア形成が両立できる空間を整備することが現実的である。

その成果を地方に波及させる循環型モデルが求められる。

都市の多様性とイノベーションは、日本全体の国際競争力を高める資源となる。

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4. 限界都市の是認と農地転用による食糧安保

 

人口減少により機能不全に陥る「限界都市」は、居住地としての役割を縮小しつつ大災害対策も含め、農地への転用を通じて食糧安全保障の戦略拠点として再定義されるべきである。

特に都市近郊の限界集落は、都市住民との協働による農業再生や環境保全型の食料供給基盤として活用され得る。

また、地方に残る高齢者の中には「取り残された」という被害者意識を抱える層も存在するが、若者の流出など現在の状況を招いたのは高齢者自身にも責任があるという事を自覚して、他世代との創発的な関係性を通じての共生を模索すべきである。

更に、地方文化の継承という問題があるが、豊かな地方文化というのは農林畜産業、水産業など経済行為があってこそ育まれるもので、文化だけが独り歩きするものではなく、産業構造が変われば自ずと変化して新しい文化が育まれるものであろう。宇宙、人間、社会いずれも一刻も止まることなく変化しているという事こそが全ての大原則であり、この流れを人知で止めることはできない。

 

若者との協働による農業再生、地域文化の継承、デジタル支援などを通じて、高齢者自身が担い手として再位置づけられることで、自己肯定感と社会的役割が回復される。

 

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5. 道州制導入による広域調整と制度的支援 

 

都市の過密化や広域課題(交通網、住宅供給、産業立地、環境対策など)は都府県単位では調整困難であり、6大都市圏を中核とした道州制の導入が不可欠である。

これにより、都市政策と農地転用、限界都市の再編、世代間共生を制度的に連携させることが可能となる。

道州制は、国家全体の均衡ある発展と国際競争力強化、そして創発的社会秩序の形成を支える制度基盤となり得る。

 

 

 

今からまず第一に準備することは、再開発特区の設定であり、それに基づく全国の用途地域の見直しである。

其のうえで、道州制を念頭に主要6大都市の再開発促進と限界候補地域での新規インフラ投資の停止、存続都市部への移転を30年かけて実施する。

即ち都市と地方の新しい相互補完の型を作る日本列島改造計画である。

かっての日本列島改造計画との違いは、皆が全国で同じ生活を追求するのではなく、それぞれの生活を選択することで、最大多数のそれぞれの幸福を追求することである。

地域間の共生であり、都会を目指す若者と地方を守りたい人々の共生でもあり、その結果として快適な未来社会を実現したいものである。